昭和52年6月18日会報第2号

                 設立3年目を迎えて

 歌人、林圭子(窪田空穂夫人)の歌集『ひくきみどり』の中に、本研究所の地鎮祭、開所式の歌14首が載っている。

  開所式

 手にかけし 仕事の故に研究所
    あらたに建つと 甥のきほへる

 開所式 よろこび祝ふと集ふ人の
    支援のみこころ ひとへに願ふ


 盲ろうの児等合宿の訓練室
    あたらしき畳 すがしく匂ふ

 研究所も3年目を迎え、基礎をしっかり固めなければならない大切な時期にさしかかっている。設立当時の初心を忘れることなく、今後も大いに努力しなければならない。
 ところで、設立当時から比べると、来所する子供たちの数もしだいに増え、その障害も多岐にわたり、本研究所の学習を中心とする諸事業も活況を呈するに至っている。
 長年の盲ろう教育によって培われた指導理念をさらに深めて、一貫した地味な教育実践を積み重ね、重複障害教育のもつ本当の意味を明らかにし、教育の内容・方法を一層明確にしていかなければならない。
 幸いにして、昭和54年から始まる国の養護学校義務制を目前にして、全国的にこの教育の機運が高まり、研究所の仕事が現場に直接お役に立つ機会が多くなってきている。例えば、昨年8月開催した重複障害教育研究会第4回全国大会においても、視覚障害関係の方々だけでなく、広く他の障害の関係者の方々の参加が目立ってきている。
 また、昨年度発行した研究紀要、研究報告書も、大変好評で、特殊教育諸学校および施設において、広く全国的に活用されていることは、まことにありがたいことである。
 小さな研究所のささやかな事業ではあるが、幸いにして、本年6月から梅津先生を所長にお迎えできたのを期して、重複障害教育が、人間行動の本質的理解に基づいた「工夫する教育」「考える教育」であり、すべての教育の礎であることを明らかにするために、さらに内容の充実に努めたい。
 設立当初より、心からなる御支援をいただいている後援会会員の皆様、日本自転車振興会の関係者の皆様に、厚く御礼申し上げるとともに、本年度もまたよろしくお願い申し上げます。